お父様が亡くなられて、葬儀の慌ただしさが落ち着いた頃。「遺産分割の話し合いを、そのうち...」と思っているうちに、半年、一年、と過ぎていきます。そんなとき、お母様も亡くなられてしまう。

「父の相続も終わっていないのに、母までも──」。残されたお子様方は、突然、二つの相続を同時に抱えることになります。これが「数次相続」です。本稿では、その複雑さと、進め方を、簡潔にご説明いたします。

I数次相続とは何か

数次相続とは、ある方の相続(一次相続)が終わらないうちに、その相続人が亡くなって次の相続(二次相続)が発生することをいいます。三次、四次と重なることもあります。

具体例で考えてみましょう。

この場合、長男・長女は、父の相続と母の相続の両方を同時に処理しなければなりません。協議の論点が、二倍、三倍に膨らみます。

II京築地方に多い「祖父名義のまま」問題

京築地方でご相談を受けていて、特に多いのが、「祖父の代から名義が動いていない」不動産です。

祖父が亡くなった当時、相続登記をしないまま放置。その後、祖母も亡くなり、父も亡くなる。気がつけば、亡き祖父名義の土地に、孫世代が住み続けている──こうした事案は、京築地方の旧家・農家では、決して珍しくありません。

2024年4月から相続登記が義務化されたことで、こうした長年の塩漬け不動産を整理する動きが本格化しています(詳しくは「相続登記義務化のいま」をご参照ください)。

Point 数次相続を放置し続けると、相続人の範囲が世代をまたいで雪だるま式に広がります。整理が容易なうちに、こまめに進める──これが、不動産・財産を世代間で円滑に承継する最大のコツです。

III相続人の範囲が、世代をまたいで広がっていく

数次相続が連鎖すると、相続人の数は急速に増えていきます。

例として、祖父が亡くなって相続登記が未了のまま、祖母、父も相次いで亡くなったご家庭を考えてみましょう。

結果として、面識のないいとこやその配偶者まで、遺産分割協議に参加しなければならない事態に至ります。書類取得だけで数か月、協議の調整だけで一年以上を要することも珍しくありません。

IV遺産分割協議の進め方

数次相続の遺産分割協議は、複雑ですが、原則は変わりません。

  1. 戸籍の取り寄せ──関係する全相続の戸籍を収集する(数次相続では数十通になることも)
  2. 相続関係図の作成──各世代の相続人を視覚的に整理する
  3. 財産目録の整理──各世代でどの財産が遺ったかを特定する
  4. 協議の方針決定──一気に協議書をまとめるか、世代ごとに分けるか
  5. 協議書の作成と署名押印取得──全相続人から
  6. 登記・解約手続──順次実行

戸籍の取り寄せが膨大になる点が、最大の負担です。弁護士が職務上請求で代行することで、ご家族の手間と時間を大きく省くことができます。

V「中間省略登記」と、その活用

数次相続で発生した不動産の登記について、「中間省略登記」という実務上の工夫があります。

たとえば、祖父名義の不動産を孫が取得する場合、本来であれば「祖父→祖母→父→孫」と段階的に登記を経由する必要があります。しかし、昭和30年12月16日民事甲第2670号民事局長通達により、中間の相続が単独相続(遺産分割・相続放棄・他の相続人に相続分のないことによる単独相続を含む)である場合に限り、一件の申請で最終相続人名義に直接登記することが認められております

さらに、平成29年3月30日法務省民二第237号通知により、相続人全員が参加した最終的な遺産分割協議書を添付すれば、中間相続も含めて一件の相続登記とする運用が明確化されております。

これにより、登録免許税や手続コストを大幅に節減できます。なお、中間相続が共同相続のまま終わっている場合は、複数件の登記申請が必要となるなど、要件の判定は事案により異なりますので、専門家(司法書士・弁護士)の判断が必要です。

Reference 登録免許税の免税措置:相続により土地の所有権を取得した者が、登記をしないまま死亡した場合(まさに数次相続の典型場面)、令和9年(2027年)3月31日までに当該者を登記名義人とする相続登記を申請するときは、登録免許税が課されません(租税特別措置法第84条の2の2第2項)。先送りされてきた古いご相続を、いま整理する大きな経済的インセンティブとなります。

VI数次相続を防ぐ、生前の備え

数次相続の最大の予防策は、「相続が起こったら、すみやかに整理する」こと、これに尽きます。

とはいえ、ご家族の感情が落ち着くまでには時間も必要です。実務的に有効な備えとして、次のようなものがあります。

Important 数次相続が複雑化しているご家庭は、京築地方でも数多くあります。「うちは祖父の代から登記が動いていない気がする」「父の相続を放置していたら母も亡くなってしまった」──そうしたご相談に、当事務所は実務的なご提案を持っております。
In Conclusion
放置すれば、絡まる糸はさらに増える。

数次相続は、相続の整理を先送りにした結果として、世代をまたいで複雑化していくものです。京築地方の旧家・農家では、こうしたケースが数多く眠っております。
けれども、どれほど絡まった糸でも、専門家と一緒であれば、丁寧にほどいていくことができます。「これは自分の代で整理しておきたい」──そう思っていただけたとき、それは次の世代へのいちばんの贈り物になります。
お気軽にご相談ください。最初の一歩を、ご一緒にいたしましょう。

監修 弁護士 細川 大介(福岡県弁護士会所属/登録番号 第61505号)
本コラムは、執筆時点の法令・実務に基づいております。法令改正等により最新情報と異なる場合がございますので、個別具体的なご相談は当事務所(担当弁護士・細川)までお問い合わせください。
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